2017年10月03日

娯楽トキドキ情報アワー土曜モチャリスタ − 土曜劇場9月30日放送分

トキ北川タイトル:謝罪
出演:トキ北川
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謝罪
出演:トキ北川
ここ数年で最も記憶に残っているうちの一つで、また、もしかしたら今後の私の人生の中で比較的大きな財産となるかも知れない会話をご紹介いたします。
「ごめんなぁ」
「いや、こっちこそ、ごめん」
お互いの軽い謝罪の念を伝達し合うためだけの、非常にシンプルな会話ではありますが、この会話をしている短い時間の間、何だか、体中に電流が流れたような、突然冷水のシャワーを浴びせられたような、そんな衝撃を受けました。
最初に私に対して「ごめんなぁ」と言ったのが、私の父親だったからです。
父が私に何を謝っていたのかは敢えて言いませんが、まぁ、取るに足りない、謝る必要なんてないようなことです。
言われた瞬間、私は本当に、泡を食いました。
なぜ泡を食ったかというと、あまりに意外な言葉だったからです。
なぜ意外だったかというと、それまでの父が私に、こんなに素直に謝ったことなど記憶になかったからです。
そんな言い方をすると、父が非常に傲慢な人間だという誤解を招いてしまいそうですが、そうではありません。
そうではなくて、これまで謝る必要が全くなかったのです。
私自身、父に謝ってほしいと思ったことなど一度もありません。
一方的に、私が謝るべきことばかりでしたが、私も父に謝ったことはありませんでした。
「ごめんなぁ」と言われて泡を食いながら、そういったことに思い当たりました。
次に私の中に生まれたのは、「親父に先に謝らせてしまった」という焦燥でした。
これまでの人生、私が謝らなければならないことは、山ほどあったろうに。
これまでの生き方それ自体を謝る必要すらあります。
にもかかわらず、私が父に謝るよりも先に、父の方に謝らせてしまいました。
焦った私は、咄嗟に、とにかくこっちも謝ろうと思いました。
そこで、何を謝っとるのかいまいちハッキリしませんが、とにかく謝りました。

ごめんなぁ・・・いや、こっちこそ、ごめん」

その後、謝罪のみならず、これまで私と父は、お互い自分の気持ちを相手に伝えるということ自体、ほぼ、してこなかったということに思い至りました。
いや、思い至ったというか、そういうことは分かってはいましたし、それでいいと、お互い究極的な照れ屋なんだし、これが我々父子の関係なんだ、と思っていなくもなかったので、再認識した、というべきでしょうか。
何ともシンプルで味気ない会話ではありますが、これが初めての、お互いの素直な気持ちのやりとりでした。
何でしょうねぇ・・・心の奥がチュクンと小さく唸って、嬉しいような、でもやっぱり照れくさいような、幸福の一種と呼べるような感覚です。

謝罪・・・人によって程度の差こそあれ、近しい関係ほど、シンプルにできないこと、なのかも知れません。

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posted by fm814 at 20:30